「——っ」


その絵を瞳で捉えた瞬間、わたしのこころは、大きく揺さぶられた。

衝撃が全身を巡り、眩暈を覚える。

わけもわからない内に、得体の知れない感情が胸いっぱいに膨れ上がった。

呼吸を忘れて、……じわりと、視界が滲む。

しみるような痛みを覚えた目元から、雫がこぼれ落ちそうになり、——わたしは、キャンバスを守るように、慌てて涙を拭った。



はっきりとした視界で、……わたしはもう一度、キャンバスを見下ろした。



一番に目に映ったのは、きれいな青色。

三澄くんとはじめて言葉を交わした日に、屋上から見えた空と、同じ色。

その次に、あたりに舞うように散りばめられた、淡くて儚い、きれいな色たち。
三澄くんらしさの溢れた配色と、筆使い。


——そして——。


その中で涙をこぼす、こちらを向いたわたしの姿。

だけど、……絵の中のわたしは、あの日とは違って。

——笑顔、だった。



『俺がしたアドバイスなんて、三澄が見たい景色を描いてみるのがいいんじゃない、ってくらいだよ』



再び込み上げた熱に、わたしは我慢できずに、へたりとその場に座り込んだ。


「……、っ」


あの日の屋上で感じた気持ちが、蘇ってくるみたいに。
胸が灼けるように熱くなり、じくじくと痛み始めた。