先生はそれだけ言うと、荷物を持って、わたしを残して準備室から出ていってしまった。
遠のいていく、穏やかな足音。
パタン、と扉の閉まる音とともに、わたしはひとり、静寂に包まれた。
……乾燥棚の、一番下……。
心の中で反芻し、おずおずと歩み寄る。
——とくん。
——とくん、とくん。
近づくにつれ、なぜだか鼓動が早まっていった。
先ほど生まれた予感が、存在を主張するように、心臓を高鳴らせる。
わたしは、……そっと手を伸ばし、目当てのキャンバスを、慎重に取り出した——。
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