「だから今回、……一旦、評価なんて忘れて、自分のために絵を描くということを練習をしてみれば、って話になったんだ。俺からはなにも口出ししないから、テーマもなにもなしにどーぞ、って」

「……え?」


不意に感じた違和感に、短い声がもれた。

貰った飴に落としていた視線を外し、ゆっくりと春野先生を見る。


「……人を描く練習じゃ、なかったんですか?」


戸惑うわたしに、先生は面白がるように目を細めた。


「へえ。あいつ、そんなこと言ったんだ」

「はい……。感情を乗せるのが苦手だから、人の表情や仕草で練習をするように、言われたって……」

「すげえ、それっぽい理由」

「……」


——どういうこと?


なんだか噛み合っていない話に、思考が止まる。