「はい、これあげる」


上にちょこんと乗っていたのは、ふたつの飴。


「うちの部員に協力してくれた感謝のしるし」

「あ、ありがとうございます……」


戸惑いながらも受け取ると、満足げな笑みを向けられて、なんだか気が緩んでしまった。


……もしかして、これがさっき言ってた『いいもの』?


小さく首を傾げていると、


「あ、ここに呼んだ要件は、これじゃないからね」


まるでわたしの心を読むように、先生が言った。

続けて、


「……三澄のことなんだけど。あいつ、入部したての頃に、『好きで描いてるというより、なんとなく描いてることが当たり前になっただけです』なんて、無愛想な顔して言ったことがあってさ。……想像できるでしょ?」


しみじみと語り出すと、近くにあったスツールに長い手を伸ばし、わたしのそばへと置き直す。


……座れってことかな。

なんとなく汲み取って、わたしは黙って腰を下ろした。