「それは、……本気で?」

「……うん、わりと……」

「この先、ずっと?」

「また勇気を出せる日が、くればいいんだけどね」


どこか他人事のように、わたしの声が、準備室に響いた。

向かいからも他人事のように、ふーん、と返事が返ってくると思っていたけれど。

三澄くんからの返事は、なかった。


画溶液の匂いに混ざって、窓の外から、ペトリコールの匂いが漂ってくる。

おもむろに空を見上げれば、いつの間にか、そこは厚い灰色の雲に覆われていた。


……天気予報、ちゃんと確認してくるの、忘れちゃったや。


「……雨、降りそうだね」


折りたたみ傘、持ってたかな。


鞄の中身を考えながら発した、そんなどうでもいい呟き。

それには、「ほんとだ」と小さな返事が、返ってきた。