菜月は俺に怒って走り出した。



「菜月、待てって」



「手を繋いだだけじゃ嫌だよっ…ちゃんと言葉で欲しいのっ。言ってくれなきゃ、嫌だよっ」



追い付いて、腕を掴んだら菜月の泣き顔。



チビの頃以来かも?



彼氏と別れたって聞いても、涙なんか見せなかったから。



「菜月、好きだよ」



掴んでいた腕を引き寄せて、菜月を抱きしめた。



ずっとずっと欲しかった温もり。



「啓太、私もずっとずっと好きだったよ。

気を引きたくて…どうしたら幼なじみの壁を越えられるか分からなくて…試してばかり居たの。
矢野センなんて好きじゃないもん。

本当に好きなのは、啓太だよ…」



強く、強く抱きしめた。



「…なつ…き?」



菜月の吐息が大きく聞こえたから…抱きしめていた腕を緩める。



「熱上がって来たかも…」



「走ったりするからだよ」



家までの道のり、おんぶして帰った。



チビの頃も、遊びに行って菜月が疲れるとおんぶしたよな…。



あの頃は自然に出来たのにな…



大人になった証拠だよな。



きっかけがなきゃ、手を繋げないのも、おんぶ出来ないのも…



“好き”が“愛してる”に変わるのも…



みんな、みんな、大人になった証拠。