心臓が跳ね上がり、鼓動が早くなる。



小さい頃は何ともなかった事が、大人になるにつれて恥ずかしくなり、その行動自体、好きな人としかしなくなる。



冷たい風邪が吹く中、菜月と俺は手を繋いだまま、バスに乗った。



矢野センが好きだという菜月がどうして手を繋いだのか…理解出来ずにいる。



バスは空いていて、二人がけの場所に座った。



手を離したら、もう二度と繋げない気がして、俺は離せなかった。



いつもなら矢野センの話をする菜月も黙っていて、窓から見える景色を眺めている。



菜月の笑顔が、



名前を呼ぶ声が、



少し我が儘なとこも、



容姿だけじゃなくて、全てが好きなんだ。



菜月が嬉しいなら、楽しいなら、笑顔になれるなら…



と、恋を応援し続けてきた俺。



“幼なじみ”という関係を壊したくなくて、想いを伝えずに今まできたけど…



近くて遠い距離を、至近距離にする為には、俺が動かなきゃ始まらないと思った。



―――なぁ、菜月、俺が好きだって言ったら…



どうする?