「中で待つ?もうすぐ帰ってくると思うし。外は暑いから。」

奥さんはそう言ったけれど顔はすごく嫌そうでした。
愛想笑いのお手本みたいな顔でした。

「はい。ぜひ。」

引き下がらない私に奥さんは中に入るように手だけで示しました。

「おじゃまします。」

通されたリビングは白を基調としていて、家具もカーテンもインテリアもシンプルでした。
どの家庭も憧れる「ていねいな暮らし」って感じ。

「どうして家、知ってるの?」

「クラスの子、ほとんどが知ってますよ。先生、よく茶化されて話してくれますから。」

「そう…。」

いくつかのサイズを組みわせで出来た大きなシェルフには観葉植物やフレームに入った写真、本当に愛読してるのかインテリアとして置かれてるだけか分からない洋書なんかが飾ってありました。

一番大きなフレームに入ってるのは、奥さんと先生のツーショット。
今よりもちょっとだけ若くて、奥さんの伸ばした腕がフレームアウトしてるので、奥さんがシャッターを押した自撮りだと思います。

ハヅキくんの写真もいくつかあったけど、圧倒的に夫婦のツーショットか、先生だけの写真が多かったです。

写真の中のハヅキくんはやっぱりちょっと写りが悪くて、ハヅキくんじゃないって言われれば、そうかもなって思っちゃいそうでした。