「ハヅキくん、一番向こうのドアに入ってね。」

女子トイレです。
ハヅキくんは幼児なので、仮に誰かに見られていたとしても子供のイタズラだと思われるだろうし、
私を母親だと思ってくれるかもしれない。

ハヅキくんも普段からママと一緒に女子トイレに入っていたんでしょう。
女子トイレの奥には男児用のトイレが設置されていたりしますから。

なのでハヅキくんは戸惑う様子もなく、すんなり入ってくれました。

「おねーちゃん、コレなぁに。」

私とハヅキくんが一個の個室に入ってドアを閉めると、だいぶ窮屈になりました。

そう、コレが置いてあったから。

キャリーケースです。
105リットル。
七十七センチあります。

コレ、十泊分くらいの荷物を容れることが出来るんですよ。
四歳の子供なら体を丸めてくれれば入ることが出来ます。

幅がちょっと窮屈かもしれませんけど、
ファスナーをちょこっとだけ開けててあげれば窒息はしないでしょう。