「崎田さんは恐くないの? 軟骨って言っても骨は骨なんだし、痛みだって耳たぶの比じゃないと思うけど……」

 口をへの字にするだけじゃなく、眉間に深い皺まで作った店長が、長椅子に座るわたしを見下ろしながら言う。

「そりゃあ少しは恐いですよ。軟骨に開けるのは初めてですし」
「開けるの……俺じゃなきゃだめ? 他にやってくれる友だちいない? 耳たぶを開けてくれた子とか……」
「今ある五つのピアスを開けてくれた人たちは県外に住んでいますし、店長には申し訳ないですが、店長に開けてもらいたいです」
「……なぜ?」
「身体に穴を開けるんですから、信頼している人にお任せしたいんです。今わたしの身近にいる信頼している人は、店長ですから」

 はっきりと自分の気持ちを伝えると、店長はくっきりとした二重まぶたの目を黒縁眼鏡の向こうで見開き、じっとわたしを見たあと、観念したように、自身の柔らかそうな髪をがしがし掻いた。

「……分かった、やるよ。これ以上崎田さんの休憩時間を奪うわけにはいかないしね」