「聞いてあげるよ?今いるかどーか」

本当に学生の頃から変わってない、思ったら即行動。止める間もなく、備え付けの端末から店員さんを呼び出した來未。

黒のベストにエプロンを付けた、フォーマルスタイルの若い男性スタッフに名刺を見せ。気さくに尋ねてしまえる度胸は羨ましいというか、敵わないというか。

しばらくして戻った彼が、オーナーは不在だと知らせてくれた。伝えておくからと名前を訊かれ、あっさり來未が代わりに答えてしまう。

「残念だったねーっ」

屈託ない明るさ。所詮は他人事。内心で大きく溜息を逃す。

もし会えてたら、なにか変わったんだろうか。ふと思い浮かんだのを自分で打ち消す。きっともう二度と会うことのない人。

蓋をして心の棚に仕舞い込んだ。彼女に、割り切った笑顔で答えながら。