「えっ。今の、もしかして、聞いてた?」
「いや、まあ、うん。聞いてた」
「誰にも言わないでください。ごめんなさい。戻ります」
どうしよ
聞かれてた。もう急いで戻るしかない。
走り出そうとすると腕をつかまれた。
「ちょっとまって!演奏、きれいだった。放課後も来てほしい。話がしたい」
そんな事言われても。話したくないよ。早く戻らないと。
結局返事はできずに教室に戻ってしまった。
午後の授業は全く集中できなくて。
ずっと『きれいだった』という言葉が頭の中にずっとこびりついている。
放課後、どうしよ。行ってみる?行かない?
迷った挙げ句、先程の建物の扉の前に私は立っている。
どうしよ、中に入ろうかな、やっぱやめといて戻るか、でもせっかく雑草の道を歩いてきたのに!
扉を開けるか悩んでいると中から音が聞こえてきた