四歳くらいのその子はあっという間に私の横を通り抜けていき、青山さんのすぐそばでつまづいて、びたんっ!と転んだ。周りの大人たちは「あ!」と思わず声を上げる。

 男の子は一瞬固まったあと、顔をくしゃっと歪めてわーっと泣き出した。


「大丈夫⁉」


 近くの無人のテーブルにトレーを置いて男の子に駆け寄ろうとした私は、次の瞬間目を見開いた。ひと足早く、青山さんが跪いてその子を立たせてあげていたから。


「派手に転んだな。怪我してないか?」


 気さくに話しかける彼は、表情はともかく口調は優しい。乱れた男の子の服を直し、手や足に怪我がないかを確認する姿を見て、私は呆然としてしまった。これまでの印象と違いすぎる。

 謝りながらこちらにやってくる母親に、青山さんは「こちらは気にせずお会計を」と声をかける。無愛想だけれど、その気遣いができる余裕さは素敵……。

 呆気に取られながらも、私は床に落ちていた小さなおもちゃを見つけた。それを拾って「はい、落とし物」と手渡すも、男の子はまだしゃくり上げている。

 すると、青山さんは小さな手に握られたおもちゃを見て問いかける。