「なにがあったんですか?」
「女性が男数人に絡まれていたから助けに入ったんだが、ちょうど開発中のゲームのことで頭が一杯になっていて。『見苦しいマネしてるとカタにはめるぞ』と言ったら謝り倒して逃げて行った」


 なんだ、人助けをしていたんじゃない! でも、そのセリフは確かに危ない組の人だと思われても仕方ないかもしれない。

 じわじわと湧いてくる笑いを堪えて、私は口を開く。


「なんとなく想像つきますけど、そのゲームって……」
「〝最強極道〟」


 渋い顔をしていかにもなタイトルを言うものだから、堪えきれずに噴き出してしまった。

 ということは、電話で『俺のシマが荒らされてるんだ』と言っていたのも、この可能性が高そう。お腹を抱えて笑う私に、彼が「そんなに面白い?」とツッコんだ。


「こんなだから、会社でもミスをした社員が必要以上に謝ってくるし、女性には特に一歩引かれている気がする。最近、目がかすむから余計に目つきが悪くなっているのかもしれない」
「はー、なるほど……」


 笑いすぎて目尻に滲んだ涙を拭い、いろいろと納得して相づちを打った。