視線だけで相手を萎縮させるとは、さすがは嘉月さん。
なんて感心している場合ではないと、肩を抱かれたまま至近距離で顔を覗き込まれてはっとする。
「大丈夫?」
「はい、全然。ありがとうございます」
クールだけれど穏やかな雰囲気に戻っている彼にお礼を言い、心拍数は上がったままバーへと向かった。
さすが最上階、窓の向こうには光り輝く絶景が広がっている。ゆっくり動く車の明かりも、スカイツリーのライトアップも、万華鏡のように幻想的だ。
その美しすぎる景色を眺められるように設置されたソファ席に並んで座り、私はファジーネーブル、嘉月さんはモヒートを頼んだ。
そわそわしつつ夜景を眺めていると、ここの雰囲気も似合う彼がゆっくり口を開く。
「俺は昔から無愛想で、怒っていると勘違いさせてしまうことが多々あるんだ。さっきみたいに少し睨んだだけで相手が怯んだりもする。この間も駅で……ああ、あれは俺のセリフも悪かったか」
駅ってもしかして、スタッフの仲間が『申し訳ありませんでした!』と謝られている嘉月さんを見たときじゃないだろうか。
ピンときた私は、詳しい話を聞きたくて促す。