しかし、青來家には複雑な事情がある。

 今日やってきたのは嘉月さんのご両親ではなく、お母様と伯父様だった。ご両親は離婚しており、シングルマザーとなったお母様と、彼女の兄である伯父様とで育てられたのだ。

 伯父様がセーライの社長であり、彼も奥様が他界してしまって子供がいないため、嘉月さんが次期社長に選ばれる。そう決まっていることではあるが、彼の実力はすでに認められているのだろう。

 伯父様は嘉月さんを本当の息子のように思っているようで、落ち着きがあり話しやすい方だった。

 美魔女という呼び方が相応しい綺麗なお母様は、嘉月さんよりは愛想がいいものの基本クールで、やっぱり雰囲気が似ているなと感じる。

 とにもかくにも、ふたりとも私を受け入れてくれたようなのでほっとした。


 食事を終えると嘉月さんからふたりで話したいと言われ、私はもちろん、父も快く了承してくれた。

 父は内心少し心配していたと思う。ここはホテルだし、夜だし、お持ち帰りされる可能性がゼロではないから。

 でも、あの嘉月さんがそんな無粋なマネをするとは思えない。彼を信じ、最上階にあるバーで一杯だけ飲んで帰ることに決めた。