「まさか……君が、都さん?」
「……はい」


 手が震え、裏返った変な声が出た。

 だって、こんな奇跡がある? お見合い相手が好きな人だなんて……!

 父たちが困惑する中、驚いていた彼の表情がふわりと柔らかくほころぶ。安堵と、嬉しさが交ざっているように見えるのは、私の自惚れだろうか。


「やっと名前で呼べた」


 ほんのり甘く感じる声色が胸を高鳴らせ、私の顔にも笑みが広がった。


 その後改めて挨拶をして私たちが知り合いだったことを説明すると、場はとても盛り上がっていい食事会となった。気を抜くと青山さんと呼んでしまいそうになるので、そこだけは気をつけていたけれど。

 セーライはネットサービスやゲームが有名で、そこから派生した玩具事業もあるというのは知らなかった。明河商事は地方の比較的小さな販売店とも契約しているため、セーライの商品を隅々まで届けられるようにという目的で取引をしたいのだろう。

 嘉月さんは副社長でありながら自ら企画会議に参加し、これまで様々な事業を成功させてきたらしい。現在は玩具事業をもっと拡大しようと力を入れているのだとか。

 カフェでおもちゃについて話したときは一般の社員かと思っていたのに、実際はとても敏腕なナンバーツーだったなんて少々気後れしてしまう。