お姉ちゃん、なぜそんなことを!? 私は青山さんが好きなのであって、硬派で優しい人がタイプなわけでもないんだけど。もしや、私に好きな人がいることを遠回しに匂わせていたとか?

 だとしたら父には全然伝わってないよ……と苦笑いする私に気づかず、父はのほほんとしいる。


「しかもイケメンらしい。ラッキーじゃないか」
「親が言うイケメンほど信用できないものはないと思う」


 据わった目をしてぼやき、四十階で止まったエレベーターから下りた。

 白を基調とした結婚式場のような高級レストランに入り、薄暗くなり始めた外の絶景を眺められる個室に案内されると、ようやく緊張し始める。

 ほどなくして青來家の三人が現れ、自然に背筋が伸びた。父たちが挨拶をする中、嘉月さんという人はどんな容姿だろうかと、背の高い男性に注目する。

 ブランド物のスーツを着こなしたスタイルのいい長身、男らしく掻き上げた前髪、切れ長の瞳が印象的な美しい顔。それをしっかりと確認した瞬間、私は目を見開いた。


「え!? あおっ……!」


 ガタッと椅子を揺らして思わず立ち上がった私は、咄嗟に口元を手で抑える。

 皆の驚いた視線が集まり、彼も目を丸くして「あ」と声を漏らした。