食事会はそれから約二週間後、三月上旬の日曜に決まった。あまり興味が湧かず、お相手の情報はざっくりとしか聞いていない。
名前は青來 嘉月さんといい、歳は二十九歳。ネット事業だけでなくゲームソフトの開発なども行っている『セーライ』の副社長だそう。
迎えた当日、いつもより丁寧にメイクをし、肩にかかる髪は下ろしたまま綺麗に整えた。上品なオフホワイトのワンピースにスプリングコートを羽織ったスタイルで、父と共に高層ホテルのレストランを目指す。
お見合いに親が同席するのは時代遅れかもしれないが、政略結婚というのはこういうものなのだろう。
なんだか他人事のように思いつつレストランがある三十七階へ向かっている最中、温和な父がどことなく嬉々とした様子で言う。
「先方の嘉月くんは、とても硬派で優しい人だそうだ。見合いとなるとあまり気乗りしないかもしれないが、会ってみれば都もきっと気に入るぞ」
「なんでそんなに自信があるの」
「都は嘉月くんのような人がタイプなんだろう? 翠が言っていたぞ」