自然にそんな考えになるのが癖になっている。けれど……もしお見合い相手と結婚して家庭に入れと言われたら、こうやってスイーツの案を出すのはおろか、カフェで働くこともなくなるだろう。

 これまで好きなことばかりしてきたから、それくらいは我慢するべきなのかな。

 ふと想像して気分が沈みそうになる私に、姉がなっちゃんの口を拭きながら言う。


「でも、その人のことまだ全然知らないんでしょう。お見合い相手だって素敵な人かもしれないし、とりあえず会うだけ会ってみたら?」
「そうするつもり。お父さんの顔も立てなきゃだし」


 一応食事会だけはすると決めているが、そのあとどうするかはわからない。正直、青山さん以上に惹かれる男性が現れるような気はしないけれど。

 かと言って、私が青山さんとお付き合いできる可能性も低いだろうだし……。

 笑い合っている仲よし親子を眺めながら、ぼんやり思う。素敵な旦那様と可愛い娘に恵まれていつも幸せそうな彼女みたいに、いつか私もなれるのだろうか。


「結婚って、好きな人とじゃなくても上手くやっていけるものなのかな……」


 ぼそっと呟いた言葉は、「あっ、チュウカマン!」とテレビを指差すなっちゃんの声に掻き消された。