「聞きたい?」
「いや、別に」
「聞いて。あのね」
お決まりのやり取りをして勝手にしゃべり出す私。姉は娘共々シュークリームを食べながら、楽しそうに青山さんの話を聞いている。
「皆が怯むくらい強面なのに、微笑むと素敵で仕事も真面目、子供にも優しいイケメンって。特徴ありすぎて逆に想像しづらいわ」
「とにかくギャップ萌えなの」
時々見せる微笑みを思い返してうっとりしていると、口の端にクリームをつけたなっちゃんがくりっとした瞳をこちらに向けて問いかける。
「ギャップもえってなに~?」
「怖そうな人が実は優しかったりするとキュンってなるあれだよ」
「キュンってなに~?」
「胸がこう、きゅってなる感じよ」
〝なになに攻撃〟を受ける私に、姉が「答えになってない」とツッコんで笑った。母親四年目の彼女は、独身時代よりだいぶおおらかになった気がする。
ママになっても素敵でいいなと思いつつシュークリームをいただくと、一時の幸福感が広がってつい思考が逸れる。
この柔らかいものも美味だけど、皮がサックサクでクリームとフルーツがたっぷり入ったシュークリーム、ヱモリで出せたらいいな。