父も私がどんな彼氏を連れて来るかとヒヤヒヤしていたらしいから、家柄もちゃんとしている相手なら安心だと考えたのだろう。

 いつかは縁談が持ち上がるような気はしていた。そして、それを受けるべきなのだというのもわかっている。

 高校から短大まで、私は明河商事の本社で事務のバイトをしていた。ヱモリの隣に建っているビルがその本社なのである。

 父の勧めでバイトを始め、卒業後もそのまま就職しろと言われていたものの、自分がやりたい仕事はこれじゃないという違和感が拭えなかった。

 逆に、当時は客として通っていた、小さなアミューズメントパークのようなヱモリがとても好きで、ここで働きたいという思いが日に日に大きくなり、父に直談判したのだ。

 ヱモリは一応、明河商事の取引先でもある。本社を建てる際に江森さん一家と仲よくなり、いつの間にか彼らが経営するヱモリに掘り出し物の雑貨を置かせてもらうようになっていたらしい。

 そういう縁もある場所だし、父はわりと理解があるほうなので、このときは私の主張を認めてくれた。その恩があるから、もし縁談話が来たら嫌がらないつもりだったのだけど……。