写真を撮るといえば……とふと思い出し、壁際の棚に飾っている、あるものを取ってきて彼に見せる。


「昔はこういうのが流行ってましたよね」


 大きなレンズと現像する機能がついた、頑丈そうな大きめの黒いカメラ。これは父が昔愛用していたアンティークのものだ。

 青山さんは興味深げに手に取って眺める。


「インスタントカメラか。懐かしいな」
「私が子供の頃は、カメラを持つのが皆の憧れだったんです。買ってもらった時はものすごく嬉しくて、写真撮りまくってました」


 懐かしい記憶が蘇り、自然に笑みがこぼれる。


「これ、きっと今もまだ需要はありますよね。スマホで写真を撮る時代だからこそ、写真がすぐ現像されて出てくるって逆に新鮮な気がします。失くしたり色褪せたりしたらおしまいだけど、その儚さみたいなものも素敵だなって思うし」


 私はアナログなものが好きだから、簡単に消したり復元したりできないところにも味があると思うのだ。

 つらつらと口にしている最中、青山さんが真顔でこちらをじっと凝視しているのに気づき、私はギョッとして肩をすくめる。