ヱモリで提供しているスイーツは、こういうものがあったらいいな、という私のわがままを里実さんが叶えてくれているのだ。
ふたりで仕事のあとに試食をしては、あーだこーだと感想を言い合い、ほかの皆にも認めてもらってから新しいメニューとして店に出している。
「メニューだけじゃなくて、この店は自分たちがオススメしたいものを提供しているんです。普通はお客様のニーズに応えるものなんでしょうけど……自分勝手な店ですよね」
ちょっぴり茶化してえへへと呑気に笑った。私はこういう自由気ままなヱモリが好きなのだけど。
すると、青山さんはどこかはっとしたような表情をして呟く。
「……そうか、それだ」
「え?」
「最近、会議であまり活気がなくてね。どうしたものかと考えていたんだが、利益を求めたり、消費者の声に応えたりするほうに意識が向きすぎて、自分たちが〝こうしたい〟っていう意見を出せなくなっていたのかもしれない」
シャープな顎に手を当てて語りだす彼に、私は目をしばたたかせる。
なんの仕事をしているのか知らないし、どういうリアクションを返したらいいのかもわからない。けれど、これはいい機会じゃないだろうかと、仕事について尋ねてみることにした。