「お待たせいたしました、ブルーマウンテンです。それと……甘いものはお好きですか？　こちら試作品のチョコレートなんですが、とってもコーヒーに合うのでよろしければぜひ」


　彼は顔を上げ、険しかった表情をふっと緩めた。


「ありがとう。いただくよ」


　よかった、甘いものも苦手じゃないみたい。ひとまず拒否されなくてほっとした。

　青山さんはさっそくチョコレートにフォークを差して口へ運ぶ。せっかくなら感想を聞いてみたいと思い様子を窺っていると、彼は舌で転がしたあと納得したように頷いた。


「ん、滑らかで美味しい。それに、ナッツの香りがする」
「すごい、正解です。ヘーゼルナッツのペーストを混ぜているんですよ」
「なるほどね。ブルーマウンテンの香りによく合っている」
「まさにそれを狙ったんです！　気づいていただけて嬉しいです」


　おぉ……なんか今までで一番会話が弾んでない？

　普通に話せているのが嬉しくてニヤけてしまう私を、彼の綺麗な瞳が捉える。


「君が作ったのか？」
「あ、いえ！　私はアイデアを出す専門で、調理スタッフがそれを再現してくれるんです。自分が食べたいものを作ってほしいだけなんですけどね」