「都ちゃん、私はあなたを尊敬してるの。まさかあの青山さんの笑顔を引き出すなんて……ノーマルガチャで超激レアが出たような感動を覚えたわ」

「どうしたんですか、いきなり」

「私にギャップ萌えを与えてくれた青山さんと都ちゃんへの、お礼の意味も込めてこのチョコを作ったの。だから、しっかり渡してくるのよ」


 にんまりと口角を上げて言われ、私はぽっと頬が火照った。

 実は、今日はバレンタインなので、店からのサービスでお客様に試作品のチョコレートをお出ししている。もちろん青山さんにもあげるのだが、私がちょっぴり緊張しているのを里実さんは見抜いているのだ。

 つまり、私が彼を意識していることもお見通しというわけ。里実さんはあくまで彼を目の保養にしかしていないので、私の淡い恋の始まりを楽しんでいるように感じる。

 あからさまに動揺しつつも「た、ただサービスで渡すだけですから!」と言い、そそくさと逃げるように調理場を出た。

 いつものブルーマウンテンと一緒にチョコレートの小皿をトレーに乗せ、青山さんの席へ向かう。今日も相変わらずタブレットと睨めっこしている彼に、緊張をひた隠しにして平然と差し出す。