「……偽名ってこと?」



私はひばりにうなずく。



「それからは本当のことを言わずに、何度もその人と会ってた。架空女子を装って。本当のことを言う機会だってあったはずなのに」

「うん」

「……それで、告白されたの。その人に」

「えっ?」



ひばりの目が大きく見開く。



「告白されたの!?」



ひばりの反応が少し可愛いくて、私はくすっと笑ってしまう。



「驚くよね。でも、それは私自身じゃないんだ。架空の、偽った私に対しての告白だったから」

「……」



ひばりは黙った。

少し冷めたホットミルクをぐいっと飲んでいる。



「それで私……、つらくて逃げ出した。連絡を返さなくなったし、話があるって言われたけれど、結局私、走って逃げた」



「それで、泣いてたの?」

「うん。自業自得なのにね」



ひばりは少し考えて、
「恋愛のことはよくわからないけれどさ」
と、両腕を組んだ。