「その人に近づきたくて。隣にいられたらなぁってずっと思ってた」
「うん、わかるよ」
ひばりは慎重にうなずく。
「でも自信がなくて……。自信が持てるようになりたくて。それで、メイクして少しでも自信を持てたらなぁって思ったの」
「うん。オシャレを頑張っていたこと、知ってるよ。すっごい可愛くなって、ビックリしたもん」
「ありがとう」
私はまた、ホットミルクをひと口飲んだ。
「片想いの人の前でね、名前を言う機会があったんだ」
ショッピングモールで。
しつこいナンパから助けてくれた。
あの時。
後藤くんが、私に名前を聞いた。
徹平くんの前で。
「私、怖くて。……こんな、いつもすみっこにいる私がメイクしているなんて知られたら、笑われたり、引かれたりするんじゃないかって」
「……」
「私だって知られた時に、どんな表情をされるのかって思ったら……、嘘ついてた。架空の、存在しない人を装ってた」