徹平くんはそんな私に、 「好きでいてもいいの?『美鳥』ちゃん」 と、重ねて聞いた。 「……っ」 (そっか。そうだよね?) 徹平くんが好きなのは。 私じゃない。 『美鳥』なんだ。 「……『美鳥』ちゃん?」 (何か、返事しなくちゃ) そう思うものの、何も言えずに。 私は。 足元に。 ありもしない、ぬかるみを感じていた。