「お金……」
「いいよ、大丈夫。オレが勝手に買ったんだもん」
ニッコリ笑って徹平くんは、
「飲むと少し落ち着くと思うよ」
と、リンゴ味のジュースを飲み始めた。
私も「いただきます」と言って、ペットボトルのフタを開栓しようと回すものの、手に力が入らず開けることが出来ない。
自分の手を見ると、小刻みに震えていた。
「貸して」
徹平くんはひょいっとペットボトルを持って、簡単に開栓してくれる。
「すみません」
「なんで?謝ってもらうようなことは全然何もないよ」
ニコニコしている徹平くんに、私は安心した。
(あの日みたい)
失くした鍵を一緒に探してくれた日。
安心する笑顔で、そばにいてくれた。
こんなふうに。
星空みたいな恋心が。
徹平くんに届くといいのにな。
徹平くんが開けてくれたペットボトルを見つめて、私はそんなことを考えていた。