「あの、離してくださいっ」

「えー、どうしよっかなー?」



ふたりはゲラゲラ笑って、逃げようとする私の肩に手を置いて力を込める。



「いやだっ、離して!」



怖くて。

大声で叫んだつもりが。

震えたような、小さな声しか出ない。



(どうしよう、怖い……!)



「ーーー何してんの?」




背後から優しい声がした。

すごく落ち着いた気持ちになれる声。



(この声って……)



振り向くとそこには、徹平くんがいる。



(なんでここに徹平くんが?)



「は?何だよ、お前」

「マジ誰だよって話だよ」



イラついているふたりに徹平くんは、
「誰って、その子の彼氏だよ」
と、言った。



(え?)



「わかったら離してくんない?その手、気分悪いから」



穏やかな感じで話している徹平くんの目が、怒っているように見えた。