徹平くんが再び自転車を漕いで。
その背中がどんどん小さくなるまで。
私は、じっと見つめていた。
星空みたい。
ふいにそう思った。
心の中にある、ドキドキやときめきに。
ひとつひとつ明かりを灯して。
キラキラ輝く星々になる。
まさに今、目の前に広がる景色だ。
徹平くんが。
何でもないこの道を。
私にとっての恋心そのものに変えた。
星空みたいな恋心を抱えたまま。
夏が過ぎ。
秋を越えて。
冬も去って行く頃。
私は中学校を卒業した。
その間、徹平くんと関わることは無かった。
ただ、ぼんやり遠くから。
徹平くんの笑い声を聞くだけで。
何も出来ずに。
私は、徹平くんとは違う高校へ進学する。
結局見つからないままの自転車の鍵と引き換えに。
私のところへやってきたのは。
実る当ての無い、恋心だった。