徹平くんは何も言わない。

黙って、私の言葉を待ってくれている。



「自分に自信がほしいって思ったんです。そしたらいつか、告白出来るかもって。メイクして、オシャレして、外見が変わったら、私もなれるかなって思ったから」



また涙がこぼれる。

指先で拭って、私は続けた。



「私もプリンセスに、特別な存在になれるかなって」



「でも、なんで『美鳥』って……」



「怖かったから。メイクして頑張っている自分は、引かれるんじゃないかって。どう思われるんだろうって。そしたら、嘘ついてた」

「……」

「私は、『美鳥』じゃない」

「うん」

「『美鳥』は架空女子で、ごめんなさい」

「……」



徹平くんは苦しそうな表情になる。



私の目からは次々と涙がこぼれていく。



「……『美鳥』なんて、いない。プリンセスにもなれない。だけど」

「……すずめちゃん」



「……だけど、徹平くんが好きです。ごめんなさい」