「……ふ、っぁ」
がくっ、と足腰に力が入らなくなった時、ようやく朔は止まった。
肩で息をする私を支えて、「大丈夫?」って、目を合わせてくる。
だ、大丈夫じゃないし、ていうかなんで朔はそんなに余裕なの。表情くずれないの。
ほんの少しの反抗心で、キッと睨む。
「……やっぱり、学校でするのやめようかな」
朔は、乱れた私の前髪を整えながらそう言った。
「澪のその顔は、俺だけが知ってればいいよ」
……そんなの、私だってそうだよ。
朔の温度の低い指先とか、甘く笑う顔とか、2人でいる時にほんの少し低くなる声とか。
そういうのは全部、私だけが知ってればいい。
他の子に、見せないで。
「……初めてだよ、こんなの」
「なにが」
「独占欲まみれになるの」
私の小さな声に、は、と笑い声を漏らす。
「いいじゃん」って、私の頬を撫でて。
「一緒におかしくなっちゃおうよ、澪」
甘い声で、朔はそう言った。