背後には冷たい壁。精一杯後ろに下がろうとしたって朔との距離は開かない。
「キスしたい」
「っ、」
恥じることもなくストレートに言葉にする朔に、私はいつも翻弄されてる。
朔ばっかり、いつもずるい。
「ちょっとずつじゃないじゃん……」
「澪から俺に触ってきたんだからもういいだろ」
「……誰か来たらどうするの」
朔の瞳に、赤くなった私が映っている。
至近距離で私を見つめたまま、朔はさらりと言った。
「見せつければいいよ。」
その熱に、浮かされる。
頭はくらくらで、体はふわふわと力が入らない。
角度を変えては何度も落とされる甘い熱に、思考も、判断能力もぜんぶ溶かされているみたい。