「もしかして聞いてた?」
「……うん」

「ごめん。付き合ってないって嘘でも言うのはやっぱり嫌だった。怒ってる?」



秘密にしてって言ったのは私で、朔はその約束を破った。
本当なら怒らないといけないのに、そんな気がおきない。


「……怒ってない」
「嘘。じゃあなんでそんな眉寄せてるの」


だって、言えるわけないじゃん。
本当は嬉しかった、とか、そんなこと。

自分から秘密にしてって言ってしまったのだからなおさら。
秘密にしたいのかしたくないのかどっちなのって感じじゃん。


素直に言葉にする代わりに、私は朔のブレザーの裾を、きゅ、と掴んだ。


「あの……付き合ってること、もう隠さなくていいよ」