でも……雨が止んだかのような、夜の街に太陽が昇ったかのような。そんな感覚だった。

こんな、単純で些細な言葉で、救われるなんて、どうかしてる。
どうかしてるけど、その時の俺にとっては、十分すぎる言葉だった。

ずっと、誰かにそう言ってもらいたかった気がした。


思わず手を伸ばして、その女を強く抱きしめた。
雨の音、心臓の音、人の温もり。

誰かに触れる心地よさを、初めて知った。



『……っおい、』


ぐらり、女の体が揺れたのはその時で。
バサバサ、と手にしていた鞄の中身が地面に広がった。

ある高校のパンフレットが目に入って、それから女に視線を移した。

息が荒くて、体温が異常に高かった。