「そばにいたいって、思っちゃうな……」
朔と電話をしたあの日、中学の時のことを朔に聞いた。私たち、前に会ったことある?って。
私、あの時、あの雨に濡れた男の子が朔だったらいいなぁって、心の隅っこで思ってた。
記憶の中で冷たい視線を浴びせられたけど、手を払われたけど、あの暖かい声の持ち主が朔だったらいいなぁって、なぜかそう思ったの。
「冷たくされるなら、優しくされるなら、それは朔がいい……って、やばいよね。こんなこと言っちゃう私も」
忘れて!と、奈子に向かってそう言う。
「……澪ちゃんは、榛名くんのことが大事なんだねぇ」
隣の教室、朔のクラスがある方に視線を移しながら、奈子は続けた。
「心の真ん中に榛名くんがいるみたい。どうして大事に思うのか、澪ちゃんならもうわかっていそうだけど?」