「──一緒にするなよ、心外だな」



ガラスの破片を踏む音、聞き慣れた声。
重たい瞼をなんとか開けると、黒いパーカーに着替えた朔がいた。

何を考えているのかわからない顔。
まえに私が黙って帰った時と、同じ顔をしてる。

名前を呼ぶと、朔は私と視線を合わせるようにしゃがんだ。



「……怒ってる?」
「怒ってるよ。怒らないわけないだろ」

「……ごめん……」

「言い訳はあとで聞くから、こっちおいで。」



両手を広げる朔の元へ体を動かそうとするけどビクともしない。

晶が、私をキツく抱きしめているから。




「……誰にも渡したくないって顔してるけど、それはもう俺のだから」

「……」

「返せよ、晶」




頭がガンガン鳴っている。
どんな音も頭に響いて、しんどくて。

私は意識を手放した。