やっぱり、怖かったから。


「澪」


ローファーを履いたところで名前を呼ばれた。
振り向くと、見送りに来たのか壁にもたれた光輝が私のことを見ていた。


「晶におまえのことを聞かれたけど、俺はなにも話してない」
「……うん」

「なんかあったら呼べ。俺にできることならなんでもやってやる」

「あは……どうせ貸し付けるつもりなんでしょ」

「当たり前だろ」



そう言って口角をあげる光輝に、思わず笑ってしまう。


「色々ありがとうね。体お大事に」
「おまえもな。首んとこ、痛かったんじゃねぇの。……ごめんな」


その言葉に一瞬目を見開いた。
隠してたつもりだったけど、お見通しだったみたい。


「なんで光輝が謝んのよ。朔に頼まれてあの人のこと見張ってただけでしょ」