「俺と朔の地元は地区によって派閥みてぇのがあって、その関係で中学ん時は高校生に混ざりながら晶とはよくやり合ってた。喧嘩の理由なんか聞くなよ。暇だったからとか、しょーもないことしか言えねぇから。
で、コイツ、マジでうぜぇくらいに強いだろ。晶も似たようなもんだったから、朔と殴り合いしてる時が1番生き生きしてた。本気でやれるのが朔しかいなかったんだろ」
チラッと後ろにいる朔を見る。
分かっていたことだけど、私の知らないことが、たくさんある。
知れば知るほど私がいた世界とは全くの別物で、少しだけ悲しくなった。
「晶は喧嘩できればなんでもいいんだよ。暇つぶしみたいなもん。なのに高校にあがった途端、唯一本気でやれる相手が消えた」
朔が姿を現さなくなったのは、私たちの高校にいたから、なんだよね。
「俺らみたいな不良が入れる高校なんて、今通ってるとこくらいだからな。そこにいきゃ朔に会えると思ってたんだろ。でも朔はいねぇし、誰と喧嘩してもいつもつまんなそうだったわ」