「そんな、こと、ない……」
「だよね。うん、ごめん。変なことを言っちゃったかも。それじゃあ、また明日ね」

 蒼くんは、そう言って身をひるがえす。
 そのまま、来た道を戻るように、歩きだした。

 わたしは、その場から動けなかった。
 ずっと、見えなくなるまで、自転車を押す蒼くんの後ろ姿を見つめていた。


 わたし。

 蒼くんに、彼女としての自覚も、気持ちも、全然足りていない。
 自覚も気持ちも足りいないまま、このまま付き合い続けて、いいのかな?

 蒼くんに強引に引っ張られて付き合うことになったけれど。
 うなずいたのは、自分だ。
 こんな状況、こんな気持ちになっているのは、全部、わたし自身のせいだ。