やがて、蒼くんは、つかんでいたわたしの手を、放した。
 そのまま、自分の髪をくしゃりとかきあげる。

「ああ、乱暴にして、ごめん。菜花ちゃんのこと、信じているよ」

 その言葉が、わたしの胸に突き刺さる。

 蒼くんは、いつものアイドルのようなさわやかな笑顔になって、わたしに笑いかける。

「大将戦、ぼくが勝って、取ったハチマキを突きあげながら、菜花ちゃんのほうを見たんだけれどさ。菜花ちゃん、両手で口をおさえていて。それが、喜んでくれているようには見えなかったから。自分の組――紅組を応援していたのかと思っちゃったんだ。疑って、ごめん」