「あのっ、好き……です。オレと……付き合ってくださいっ!」

 王河に告白した翌日の7月16日水曜日の朝。

 駅の構内で夏帆と一緒に友達を待っていたら、突然男子に告白されて、大きく頭を下げられた。

「あの、オレ、小川暖って言います。風光学園の2年生です。朝の電車が一緒で、かわいいなぁと思って見ていて好きになりました。オレとお付き合いをしてくださいっ!」

 駅を行きかう無数の足音やざわめきをかき消すくらいの大きな声。

 通り過ぎる人々が、チラッとあたし達に目を向けていく。

 大勢の人に見られて恥ずかしい。

 だから慌ててあたしも小川くんと同じようにお辞儀をして、お礼を言った。

「ありがとうございます」

 そしてそのあと、好きな人がいることを伝えようとしたら、その前に、小川くんのはずんだ声が降ってきた。

「じゃあ! オレと付き合ってもらえるんですか!?」

「……え?」

「『ありがとうございます』って、そういう意味ですよね!? やったぁ~!」

 ものすごくうれしそうな声に顔をあげると、小川くんは飛び跳ねそうな勢いで喜んでいた。

 えっ、違うのに。どうしよう。