「乃愛の初めて、全部俺がもらうから」

 っていう低くてキレイな王河の声が耳に響いたとき、その言葉の意味がよくわからなかった。

「……え?」

 右隣に顔を向けて、聞き返す。

 その間に近づくのは、ため息がでちゃうくらいキレイな顔。

 二重の目は涼しくて、凛としているのにどこか甘い。

「王……河……?」

 目の前の男の子の名前を口にして、少しだけ首をかしげる。

 だって王河、急に雰囲気が変わったんだもん。

 今の今まで、あたしと一緒で、勉強に没頭していたよね?

 それなのに、急にどうしたの?

 『乃愛の初めて、全部俺がもらうから』ってどういう意味?

 不思議に思って、もう一度王河に問いかけようとした。

 その前に、細くて長いひとさし指を、スッと唇にあてられた。

「バーカ。しゃべるな」

「…………」

 って、なんだろう?