心の中でクスクスと笑いながら、乃愛の手を引いて誘導をする。
でもなんで今まで、忘れていたんだろうな。
“あのことも、あの場所も”。
待ち合わせの駅まで引き返す途中、人にバレないように、さっきはずしたサングラスを早めにかけた。
駅について電車に乗って、2つ先の駅で降りる。
ここの駅は、花火の人出でごったがえしていたさっきの駅とは違い、人もまばら。
その歩道を、目的地に向かって、乃愛と並んでゆっくり歩く。
ゲタをはいている乃愛に負担がかからないように、ときおり横を見ながら考える。
そういえば10年後って、忘れていたけど、今年じゃね?
“あれ”を乃愛に渡そうと思っていたのも、“あの言葉”を乃愛に言おうとしたのも、両方とも10年前の俺の計画。