「でも、イヤなの。そのうち、誰かにとられちゃうんじゃないかと思って、心配で心配でたまらないの。しかもそれを今日は、知らない女の子にだけじゃなくて、親友の……夏帆にまで思っちゃったの」

「え?夏帆?」

「そう、夏帆。こんなあたし最低でしょ。あたしだって、こんなあたしイヤすぎるもん。こんな自分なんか、大っキライ!」

 乃愛は大きな声で言って、両手で顔を覆ってしまった。

 ごめん、乃愛。

 俺、乃愛のこと、待たせすぎたのかもしれない。

 だからこんな風に、ヤキモチを通り越して嫉妬とかしちゃったのかな。

 見ず知らずの女の子はもとより、夏帆までも。

 それもこれも、全部、俺のせい。

 俺がふがいないせいで、それも負けるのがイヤとか子供みたいな意地を張ったせいで、大好きな女の子を泣かせてしまった。

 それどころか、自分のことを”大っキライ”とまで言わせてしまった。

 “好き”っていうたった二文字を、俺が乃愛に言わなかったせい。