「乃愛、早く」

 ……って、無理だよ。王河の隣に座るなんて。

 そんなの、勉強どころじゃないもん。

 さっき封印したはずの恋心があふれ出して、あたしはただの幼なじみってことも、それからクラスメートとしてちゃんと勉強を教えてあげるっていう決意も、全部きれいに吹き飛んじゃうよ。

 でも……。

 ――ポンポンポン。

 今度は、無言でラグをポンポンされた。

 これで3回目。

 ここまでされたら、隣に座らないわけにはいかない。

 もぉ! 王河って、ちょくちょく俺様なんだよね~。

 あたしの気持ちも知らないで。

 ほんと、困るっ。

 心の中でちょっとため息をついてから、あたしは観念して王河の隣に移動した。

 仕方がない。

 大好きな王河のためだ。

 このあとは、ひたすら無になろう。

 勉強だけをがんばろう。

 そう思っていたから、その後、王河とどんな話をしたのかよく覚えていない。

 ひたすら宿題を解くことと、期末テストのあとから今日まで習った範囲の説明をすることをがんばった。

 だから……。