『今週の日曜日の夕方、乃愛と花火を見る約束をしてるの。あたしと七海と紗良と乃愛で』
『……え?そんな話。俺、乃愛から聞いてないけど?』
『藤城とは会いたくないんだって。どんどん欲ばりになって、勝手に悲しくなる自分が嫌だからって』
『…………』
これは、Moonカフェを出て、結局俺を外で待っていた夏帆と、歩く駅までの道のりで聞いた言葉の数々。
それを日曜日、K駅に向かっている途中で思い出す。
『取り返しがつかなくなる前に、行ってきたら?』
とぽつりと夏帆は言った。
『乃愛とのデート、特別に代わってあげる。17時半に、K駅で待ち合わせだから』
さっきのぽつりとした声とは一転、夏帆は鼻をツンと上にあげて、ショートの黒髪を手で払いながら、生意気そうな顔で言った。