でも反論する前に、
「夏帆~、乃愛ちゃんおはよ~」
と手を振りながら七海が駆け寄ってきたから、あたしは反論の機会を逃してしまった。
それ以降、軽井沢に行った時も、藤城はあたしのことを夏帆と呼んだ。
そのたびにあたしの胸はきゅんとして、それからズクンと痛くなった。
さすがにもう告白されたんだろうな。
もう付き合ってるんだろうな。
諦めきれない思いが、胸にくすぶる。
でも乃愛は軽井沢でも帰りの車の中でも元気がなくて、どうしたんだろう?と思っていた。
軽井沢から帰ってきた後、乃愛に会ったときに、さりげなく聞いてびっくりした。
藤城は乃愛に告白をしていなかった。
なんでだろう?
どうして藤城は、乃愛に好きだって告白をしないんだろう?